ケイヴ/おまる
この男の癪に障る。毎日こんな具合だ。
瞳くんとマキちゃんはこっそりと会っていた。見晴らしのいい所に座って、相手を見つめたり、手を繋いだりする、それだけで、お互いの肉体に驚きと交歓とがはしった。マキちゃんは次第に、今付き合っている男と別れて瞳くんと一緒になりたいと思うようになっていた。付き合っている男は医者だった。都内の豪邸の実家をもっているような人で、周りからは、まだ三十歳なのに「先生」と呼ばれていた。プレイボーイで、性の研究をしているようなところがあり、次々に女を籠絡していた。マキちゃんとは、マキちゃんの母親が入院していた病院で出会って、一目ぼれした。男はマキちゃんの身辺調査をし
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