ケイヴ/おまる
 
、その場限りの会話などしないマキちゃんは内心驚いた。それは、平時とは違う、何ものかが作用している為のように思われた。
はじめは、お互いの共通事項である昨日の震災の話になった。かれこれ話しているうちに、男の素性が明らかになってきた。男は経営者だった。「あなたと話が出来たのも、こんな時だからでしょう?時にはいいもんじゃないですか?ねえ店長!」と男は陽気に言った。それに店長は相槌を打っていた。
「そうですね」とマキちゃんはいった。
今、目の前で起こっていることが、ショックだった。 その瞬間、パッと街全体が、いつもの明るい姿にもどった。何人かの客が声を上げた。

それまでのおぼろな時
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