ケイヴ/おまる
中で叫んだ。瞳くんは若いのだ。若いというのは一つの精神のようなもので、仕方のないものかもしれない。マキちゃんは憮然としたまま、足早に電車に乗り込むと、ずっと窓の向こうを眺めていた。ビルディングが形もなく移ろうだけの、意地の悪い景色が広がっているだけだった。「こんなところにいても、ちっとも嬉しくない!」涙が出ていた。でも本当は、そんなことが悲しいのではなかった。何も起こらない、心が震えるような事が起こらない、それが悲しいのであった。
駅を降りると、いつもとはガラリと違う景色が広がっていた。マキちゃんの住んでいる地域は、昨日の大地震で計画停電となっていた。真っ暗な街は、いつもより巨大に感じら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)