山林/山人
きは尺取り系の幼虫である。一つ尺をとるごとに触角を無意味に動かし、いちいち着地点を毎回毎回探りながら動いている。ただしかし、また無意味に方向転換し、行ったり来たりを繰り返している。いったい君は何がしたいのだ?と問うてみるが、彼は一向に苦にするでもなく延々と繰り返すのみである。気持ち悪い彼から視点を動かすと、まさに一本の棒のようにすらりとした身体の薄緑色の美しい尺取虫が尺をとっていた。これでもかというほど真っすぐに伸びた前足を次の着地点にしっかりと粘着し、後ろ足を引き寄せている。尺取虫というのは胴体の真ん中に足がないので、どうしてもああいったクネクネ運動になってしまうのだが、これまた実に目立つ動きな
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