山林/山人
だったのでゴミ袋を敷きものにし、握り飯を堪能していた。腹が減っていたのでとても美味かった。握り飯の具は梅干しとタラコだった。ただ、たっぷりと雨水が染みこんだ合羽の下の衣類は汗と蒸気で濡れ、不快極まりないものであった。
握飯を食べ終える頃、枯れ木にまとわりついた滑稽な何かの幼虫が盛んに触角を動かしているのが目に留まった。幼虫にしては芋虫型ではなく、成虫と幼虫のあいのこのような生き物で実に不気味な気持ち悪い形状である。仮に彼と呼ぶなら、彼は盛んに触角を動かし、次の着地点を探っているようなのだ。つまり彼は目を持たぬ(烈火か退化した?)生物であり、触角でしか着地点を探すことができないのであろう。動きは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)