九月の決壊/唐草フウ
 
白線の外側には
出られなかった気持ちを
服のポケットで押し砕く
(一糸乱れないように)


フェンスの向こうにある
夜明けという抱擁の残酷さよ
迷い子の蛍たちが
溶けたチョコレートをくちびるに塗りたくる
(泣いたりしないから)


言えなかったことば
言いたかったことば
わかっているのですか
わかってほしかった
(きらいとは言えなくて)

土の上をどこまでも歩く
つどったドールたちは熱い眼球から砂の涙を流す
夏なんて何も楽しくなかったと
溢れても跡が残らないように

            
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