東小金井『オーダー』/北村 守通
『オーダー』
カラン、コロロン・・・
重いドアを開けると懐かしい音が迎えてくれた。あとから調べて知ったのだが、ドアベル、と言うんだそうだ。
店の中は思ったよりも広かった。その広さに目が慣れる前に、今度は懐かしい声が私を出迎えた。
「おぅい!苅谷!」
声のする方に目をやると、そこには見覚えのある顔があった。古田健司だった。昔、スチールウールの様にふさふさだった髪の毛は後退しきって見る影もなかったが、その目、鼻、口そして声は、彼が間違いなく古田健司であることを示していた。私も大きく手を振って応えてみせた。
「いおぅい!しばらく!」
まず、私たちはしっかと固い握手をし
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