東小金井『呼び出される男』/北村 守通
 
、あるいは何らかの偶然で口を開くことがあれば二言三言交わして談笑はする、というくらいの間柄だったと記憶している。
 そういえば確か、湘南の辺りの出身だと聞いたことがある。初めは電車で通学していたが、大変なので二年の途中から下宿するようになった、という話をしてくれたことがあった。
 そんな“古田健司”という男から電話がかかってきた。
 それも。
 たまたま用事があって東京に出てきていたこのタイミングで。
 最初、事情が呑み込めなかった私は、しばらく妙な唸り声をあげながら歩道を右往左往していた。そして、やや落ち着いて話ができるようになって初めて、私たちは挨拶らしい挨拶をかわし、そしてありきた
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