東小金井『呼び出される男』/北村 守通
『呼び出される男』
「“マトリックス”で十八時ということで。」
久しぶりにかかってきた電話だった。
あやうく通話機能の使い方を忘れるころであったが、指先は持ち主の意思に反して慣れた動きで対応した。スピーカーから聞こえてくる声には聞き覚えがあったが、その持ち主の名前について記憶の奥底から引き揚げてくるのには時間を要した。
古田健司
大学時代に同じ学科に在籍していた。
授業では隣になったこともあったし、実験でも同じ班になったこともある。
しかしながら
それでは仲の良い友達だったのかと問われれば、それほど親密な間柄でもなかった。実験などで必要があれば、あ
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