全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
り、喜びはただ喜びだった。
(ハインリヒ・ベル『X町での一夜』青木順三訳)
彼女は頭がおかしいという噂をたてられていた──事実またそのとおりだった。
(カブレラ=インファンテ『亡き王子のためのハバーナ』変容の館、木村榮一訳)
君に必要なものがぼくにはわかっていた。単純な感情、単純な言葉だ。
(ナボコフ『響き』沼野充義訳)
彼は指を突き出して、宙に小数点を書いた。でも、ラルフ・サンプソンはその点にさわれる。彼がさわると、点がバスケットボールに変わる。一点差の勝ちだ。ジャンプして、シュートだ、ラルフ。得やすいものは失いやすい(イージー・カム・イージー・ゴー)。
(アン・
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