全行引用による自伝詩 01/田中宏輔2
てきた。質素だが身だしなみのよい服装をしていて、千鳥の卵のようなそばかすのある顔は、いきいきと賢そうで、ひとりの力で世の中を歩いてきた女の人らしく、態度もきびきびしている。
(コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』ぶなの木立ち、阿部知二訳)
彼女の視線はゆっくりと動いて、すべてのものの上を渡り歩いた。
(ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』7、井上一夫訳)
彼女はふり返って、微笑(ほほえ)んだ。「今度は何を考えているの?」と彼女は尋ねた。
はじめて彼女の顔を正面から見つめた。その顔は理解を越えるほど素朴な顔だった。つぶらな目があり、そこでは不安はただ不安であり、
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