ことばの美はどこに隠れている(更正済み版)/室町 礼
本を抜いては戻しながら「やっぱりだめか」
と半ばあきらめていたところ、ストンと手がとまる小説があった。
その文体たるやワンパタの翻訳ものの文体とはまるで違うことが一
目瞭然だった。まるでほんの少し脚に疲労がきているような泥だらけの
百姓がごつごつした節だらけの手で書く小説、といえばいいのか、
そういう手でこつこつ書いている文体だった。
これはたまらないと思いました。内容なんかどうでもいい。これなら
一日二十四時間、毎日でも読める。そして読んでみると恐るべき内容
と哲学の小説でした。読後、まったく知らなかったこの世の冷蔵庫の
ような世界を知ることになる。マネーとは何か。その純粋さと
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