ことばの美はどこに隠れている(更正済み版)/室町 礼
技巧がどれほ
どあろうと、どこかで読んだ例のあの文体だと思うと読めない。
文体に独自性がないと、わたしにしてみればその詩は「そのひとの詩」
ではなく「みんなの詩」なんです。そしてそういうものからは美を感じ
ないのです。これは悪い運命のもとに生まれてきた感性です。
天然自然に個性的に"脱臼"したことばならわたしは内容が悪くても一日中
でも読んでいられます。そういう文章なかなかお目にかかれないのですけ
どね。
で、結局わたしがこの30年のあいだに買った小説はわずか一冊だけで
した。アーサー・ゴールデンの『さゆり』です。いつものように、
ジュンク堂で矢継ぎ早に本を
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