机の上に射し込む光の川/道草次郎
いな」
その利用者さんはしょっちゅう「身体と心がバラバラです」、とか、「自分は生きていていいんだろうか」などという類の事を、細かいけれどもよく整った字で日報に書き連ねたりする。
偶然の雑談から互いに文学好きであると知って以来、時折、話をするようになった。職員と利用者という立場の違いはあれど、文学の話に垣根は無いように思われた。
ぼくはつい頭に浮かんだ事を口にしてしまう。
「でもやっぱりサンテグジュペリの『夜間飛行』とか『人間の土地』は、堀口大學の訳で読みたいな。ところでボードレールを堀口大學は訳しているよね。サンテグジュペリとボードレール、おんなじフランスだけど、随分毛色
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