図書館の掟。/田中宏輔
が唯一
死者たちのこころを乱すものなのだ
死者たちにこころがあったとしての話だが
というか
こころと呼んでいいものが死者にもあるとしての話なのだが
死者たちの心理学はまだ解析されはじめたばかりであったが
生きている者と同様に自らの意志で目を開くことのできる死者が出現して以来
死者たちについての分析が急速に進展していることは事実であった。
ただそれが
自らの意思では目を開くことのできない死者にも適応できるものなのかどうかは
異論が続出しているのが実態であるが。
生者たちの睦言
そんなものでさえ
死者たちにとっては
致命的なものなのだ。
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