図書館の掟。/田中宏輔
 
だぞ。
 あるいは、きみを直接、図書館警察の身に引き渡すこともできるのだ。
 死者はオークションに出品されなければならない。
 その法律を破った者に、どんな罪が科せられるか知っているだろう?」
「いや、あなたは、そんなことはしませんよ。
 ぜったいにできませんよ。
 このカタログをごらんになればね。」
男は図書館長の前にカタログをもって拡げた。
図書館長はため息をついた。
「これは、わたしが研究している日本の二十一世紀の詩人じゃないか?
 生前に、わたしのように引用のみからなるポリフォニックな詩を書いていた詩人で
 そうだ
 それは
 すぐれた詩人
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