図書館の掟。/田中宏輔
 
に収まっているのだ。
  その表現者の一部となった
  たくさんのシェイクスピアがいるのだ。


この詩人の自我もわたしの一部となっているということだ。
わたしの思考傾向をつかさどる自我の一部となっているのだ。

図書館長は
番号のついたメモの写しをファイルのなかにしまった。


     *


図書館長は
詩人のメモのコピーを眺めていた。


  作者が作品と同じ深さをもっているとはけっして言えない。
  作者が作品と同じ高さをもっているとはけっして言えない。
  作者が作品と同じ広さをもっているとはけっして言えない。


図書
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