MEMBRANE「”境界溶解”―― 変容の螺旋」として12片/あらい
 
すかに浮上する どこか 言い損ねた「うれしさ」の重みを抱えたまま 落ち着いたものである てのひらで、おおいに捕えたのは 返事ではなく、ただの体温だったのかもしれない

 ――じっと、どこかを見ていた
    それが醜典だとしても、
     口を閉じたくなかった――

 届かぬものとして永続しながら、回帰しながら喰らっていく。台所のナツメ球を焦がし、死を塗った指先と固形でいて、わたしの背骨は光ではなく隙間から湧きあがる。パンの上の耳はあまりに柔らかく 口当たりがいい。また生きている。多分、誰かの願い事。雲の一点から願いもしない。邪念もなく、飛ぶために刻まれた恐れは裏返しだった。
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