MEMBRANE「”境界溶解”―― 変容の螺旋」として12片/あらい
 
たどり着いて夢とうたった。声にならなかった願いが、頁の裏で燃えていた。
 一人乗りの待合室で窓を叩く。鼓膜の内側にだけ跳ね返る。残された空の器に、ひかりが入ってくる。食道に取り残された眼球が認めた世界に伝染るのではなく、擦れるように貼りつく景色となる。音を立てて割れる気圧と季節のあいだで。硝子に流れる泪が反射して、視線は(けものめいた)嗅覚で記憶をめくるための、剥製のようなわたしを置いていた。おぼろげなものすべてどこかへ行ってしまった。残ったのは、輪郭の抜けた影だけだったが。


第十一膜:祈りの沈殿

『静かな、でも執拗な異常』
 会話が途切れた 短い世界とはその揺れを かすか
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