MEMBRANE「”境界溶解”―― 変容の螺旋」として12片/あらい
 
ものがある。それは、言葉がまだ届かない密度。
 うろ一枚一枚に浮上する 常懐の焦げあと。湿りと熱の境界に翔ける、焼けた目玉とふるえている、孔雀蝶。冬に溶け落ちた蝋燭たち。まぶたの磊を通して、存分に退化した朝焼けを吸い込む、大水青。

 事実など、そのくちばしで鋭利に摘まれた花と共に落下する、束の間の夢と溺れよ。語句を削るたびに、なにかが強くなる。失われた言葉の空隙が、かえって密度を高める。削るほど、濃くなる。紙片に書かれた最後の行だけが真実であるかのように、蛹のなかではすべてが集約されていく。その境界は固体的だが脆い。ひとたび破られれば、二度と戻れない。しかし、その壊れやすさこそが、変態を可
[次のページ]
戻る   Point(3)