MEMBRANE「”境界溶解”―― 変容の螺旋」として12片/あらい
のを掴む前に、総てが先に辷りおちていく。対岸の芝は萠えるような そこに、のっぺりと黄昏の雨がくる。
第五膜:蛹の沈黙
外筒にコインを吊す、これは儀式ではなく、重さの格好
一脚の椅子の残響 忘れ形見がまだ、壁にじんわりと染みている
身体が自らを疑う瞬間 さっきまで誰かがいたときに刻むような仕種
静寂は、いつも中空にぶら下がっている。蛹とは、沈黙の中で行われる彫刻である。自己が自己を喰い破りながら、別の姿に凝縮されてゆく。
輪郭にすぎない。欲望のうしろに垂れたひと匙だけの温度で。残っていた。白い蛇のような腕に蛭が吸い付く。拍芯がじわじわ鳴く、内腑の季節がつ
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