世界の渚/カワグチタケシ
 
んなことではなく
革命よりも待ち合わせを
自由よりも約束をもっと

寒くなってきた
急に
どうしてそんなに睨む
邪悪なうさぎの目をして


7.夕立ち

病院の自動ドアを出ると
鈍く光る雲から
こらえきれず落ちてきた夕立ちの粒が
アスファルトを叩き
アスファルトの埃を叩き
汚れたミルククラウンから立ち上る
夏の記憶
初めて自転車に乗れるようになった夏
房のついたハンドルの埃の感触
夏の残骸
ダイヤルを廻す指
葡萄の匂い
君は今どんな夢を見ている?


8.サン・モリッツ

山荘の広大なガラス窓越しに望む透明な湖面の波打ち際に
北の小島から
[次のページ]
戻る   Point(10)