世界の渚/カワグチタケシ
 
から昇る小さな灯かり
モーレア島では夕日が左の掌に沈む
珊瑚の環

サン・モリッツ/モン・サン・ミッシェル
全てが死に絶えた半円の干潟に射す細い月の光は
泡を照らし砂を照らし
全ての死をぼんやりと光らせる
夜光虫の光跡をたどる足音のない弱い光り

山荘の芝生の傾斜面を足跡だけが転がり落ちていく


9.雪

(もう一度、忘れないうちに)

思いつくかぎりの雑な言葉を積み上げる
わりとたくさんあるどうでもいいことのひとつ
世界の渚まで

漂流物 反古 書かれた言葉
や書かれなかった言葉たちに波が打ち寄せる
世界の渚

雪 そして終わらない朝 永遠の夜から来た

 
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