夏帰り/トビラ
 
度はちゃんと合格できるようにするから」このままでは終われない。終わりたくない。
 「そっか、うん。期待してるね」林さんは目を細め、どこか遠いところを見るような顔で笑う。僕はそこまで遠いところに行けるだろうか? この安物のスニーカーで。でも。
 「それまでに調べておくね。小洒落たカフェ」
 「うん、がんばってね」林さんは立ち上がって言う。
 「じゃあ、今日はメイドカフェに行ってみようか」
 「あ、……うん!」
 「浅沼くんはメイドカフェって行ったことある?」
 「いや、行ったことないんだ。一度行ってみたいと思ってたけど」
 「なんだよー。自分が行ってみたかっただけかよー」
 「え?
[次のページ]
戻る   Point(1)