夏帰り/トビラ
度はちゃんと合格できるようにするから」このままでは終われない。終わりたくない。
「そっか、うん。期待してるね」林さんは目を細め、どこか遠いところを見るような顔で笑う。僕はそこまで遠いところに行けるだろうか? この安物のスニーカーで。でも。
「それまでに調べておくね。小洒落たカフェ」
「うん、がんばってね」林さんは立ち上がって言う。
「じゃあ、今日はメイドカフェに行ってみようか」
「あ、……うん!」
「浅沼くんはメイドカフェって行ったことある?」
「いや、行ったことないんだ。一度行ってみたいと思ってたけど」
「なんだよー。自分が行ってみたかっただけかよー」
「え?
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