華火  /月乃 猫
 

今宵
閃光にうばわれた
満月は雲
火は華と化し、
秒速の命を生きる
あまたな人を幸せにするため

匂いを放つ 月光のうすあかり 
遠く遥か隣り街に 山の端を染め
火の華を 見下ろす

付与された億年の惑星の時のなか
私もまた秒速の人の命を生きる


懐かしい
柔らかな草原を歩くため
あいまいな存在の意味を 手に入れる
まるでそれが生きる 仕事のように

暖かなベッドの草の褥を 背にするためなら
細いのどへ
いばらに 言葉ものみこむ 

永遠にすねた沈黙をよそおう子さえ
平然な笑い顔にかえる
それができるなら


停滞した 閉塞の世界では
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