竜が街を歩いている/みぎめ ひだりめ
 
まどらかな 朝の空気が
うすくのばした 綿みたいに
街中を したたっている



誰かが眠っているであろう
真っ赤な屋根の お家が
折れた 背骨みたいに
やわらかく
押し潰されている



ああ そうか
あいつは呼吸をしていない
ぬめりとした 鱗を
どれだけ 揺らしても
光に うつらないのは
あいつも また
ぐ  と眠っているからだ




並べられた たくさんの家は
見えない海のなかへ
どうしようもなく
どうすべきもなく
ぐぐまってしまって
静かに じとっと ついえていく



ああ あの家って
昨日 一緒に帰った 
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