竜が街を歩いている/みぎめ ひだりめ
た あの子の
ぐ
ぐ
ぐ
あいつは四肢を 地面に突き刺し
錆びついた翼を 空に広げている
翼骨に挟まった 欠片が
ざさ ざさ と 空気に落ちていく
ああ
きっと あいつは 誰かの願いなのだ
朝など来ないで欲しかったのだ
ずっと ずっと 眠る言い訳が欲しかったのだ
その巨大な瞼を 閉じたまま
ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ
あいつは 世界を羽ばたかせていた
ぼくは あらゆる瓦礫の 海に抱かれてしまって
ぐ ぐ ぐ ぐ ぐ
滴っている 綿みたいに
ぼくは じっとりと 街中に広がった
それは ぬめりとした
あいつの 鱗のようだった
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