詩論/杉原詠二(黒髪)
 
れは、宗教的方向へ、変わりました。そのたんぱくなる所が、自在な筆になって、音として美しい詩を書くようになりました。そして、世界的にも通用するような詩人になったといえるでしょう。

例えば吉増剛造を例に取りましょう。彼は、言語に徹底的にこだわり、怪物級の記憶力と想像力をもって、新しい詩の世界を切り開きました。抒情に、真実を込めたといっていいでしょう。そうして残った詩集たちには、歴史的意義が宿っています。

闘う方向を見いだせない戦士は、余分な血を流すだけで、本当の強さを得られないでしょう。同じように、本当の歌を歌えない詩人は、石を投げているだけと同じ意味しか持ちません。

詩は、愛を、真
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