カフカに思う/こたろう
は「意識的に」そこから遠ざかること。メビウスの輪のように、表と裏が地続きになった世界で、存在しえない表と裏の変わり目に見い出す、虚数のようなもの。砂漠は虚数をよりよく見せるための条件。蜃気楼のような、実体なき視覚像。一面に広がる不毛の砂漠だからこそ見ることが許されるカナーン。
小説の砂漠は言葉の砂漠。水を溜め木を生やすことが出来ない言語的土壌、それは外国語話者のことではないだろうか。言葉の意味が深く根を下ろすことが難しい土壌。言葉の砂漠、それは意味が貯まることのない土壌。意味が貯まらないゆえに、そこに幾多もの意味を流し込める土壌。母国語の持つ意味=規範を越える力を持った言葉。
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