カフカに思う/こたろう
カフカの小説は感情移入を拒む。そして感情移入することが、読みとしてどれだけ浅はかかを知らせてくれる。感情移入ではなく、言葉と言葉の連なりから愉楽を汲み取る読み、カフカが感じていたであろう言葉を繋げていく密やかな快楽、言葉たちが演じる新たな意味作用を見つける喜び、彼の小説が提供してくれるものとはこういったものなのだと思う。もっとも散文的な要素から、かつてあったためしのない詩情を生み出したのがカフカだ、クンデラのこの表現は正しい。
カフカは小説という形式を使って、詩を書いたんだ。
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