カフカに思う/こたろう
 
 カフカはするめイカだ。するめテクストと呼びたい。文体は質素だし、感情は薄いし、一見晦渋。テーマが見えにくい論文みたいな印象。でも、少しずつ奥に踏み込んでいくと、ヘンテコなユーモアや皮肉がアミノ酸みたいに味わいを出す。ジョイスの絢爛豪華な知的遊戯ももちろん好きだけど、質素さから奥行きのあるヘンテコ世界を生み出す技倆は文章の規範みたいなものだ。カフカから学ぶことがたくさんたくさんある。 正直なところ、カフカもろくに知らずに小説や詩を書いている連中なんて片腹痛い。

 ブランショが言っているけど、カフカの小説は砂漠だ。約束の地カナーンを求めてそこを彷徨う主人公。でも、カナーンを求めること、それは「
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