蚯蚓/田中宏輔
斜めに縦横無尽にぐぬぐぬぐぬぐぬのたくりまわっていた。一瞬めまいらしきものを感じたけど、ぼくは、すぐに立ち直った。だって、あのカフカのグレゴール・ザムザよりは、不幸の度合いが低いんじゃないかなって思って。ザムザは、全身が虫になってたけど、ぼくの場合は、あそこんところだけだから。パンツのなかにおさめて、上からズボンをはけば、外から見て、わかんないだろうからって。こんなもの、ごくささいな変身なんだからって、そう思えばいいって、自分に言い聞かせて。情けないけど、そうでも思わなきゃ、学校もあるんだし。そうだ、とりあえず、学校には行かなくちゃならないんだから。ぼくは、以前チンポコだった蚯蚓を握ってみた。いき
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