逃音のふるえ/あらい
 
逃音(とうおん)のふるえ

やけにあまいにおいがして
かぞえそこねたふうとうを 
ひっかけたほうから
あの子たちがとおったらしく
ひとりきりのうつねばかり

あの角でむせる ふわずりと呼んでいる
ひざうらに落ちていた ひかりびらが滲んで
喉から流れていく、ゆびきりの鼓動のように

(とじこめるためのものだったのか

まだらにぬれる とうかたいとおい
とおいけれど とじきれないまばたき
ひそりみ/めくらぐもり/つんづみく
なづけをあきらめたものだけが
このリズムにゆれる

あるいは 読む直前の口の開きかた
石に似て やわらかい 
時間ではなく その横
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