逃音のふるえ/あらい
 
の横をなぞった
降りたたまれた逃げ水のように
記号未満の兆(しる)しとして

「それはほんとうに――」

のぼりつめるまえに
また、ゆらぐ
きえて 
きえきれず 
きえおくれたまま 
ドロとともにひびがはしる
ならない、なのない起点に。
途中でちがえた重力のふるまい、
まだ、やさしすぎる。

(ゆくえの骨は、まだぬくい

ドライアイス(這いまわる)の白い舌が、
子守唄のように縫いあわせる
あれ、というゆびさしがこげる、
はじめにうすく ささやかに織れた
ガラスごしの午前三時 そらのしたから

ひと呼吸のなかに剥がれた帆に、
こびりついた芽が息(こえ)をひろう。
鳥が折りたたまれていた。
噛んだ唇の外縁(そとべり)だけがツブサに

歩幅未満のふるえが
生まれて。曇るまえに
奥でふりはじめ、術(すべ)らせていく
そこにまく朝は、硬い
ひかりがこすっている背中に
ふいに沈んでいくあたりで

(遠回りの?ささめきぼし?と呼ぶことさえ
戻る   Point(3)