クレピュスクルの詩人−「立原道造が求めた形象」展のスケッチ/バンブーブンバ
た辺りに人はなかった。小ぶりな記念館に来訪者もなく、遠くの絶叫を透くようにして、立原の詩集を開いた。
知る人も多いこの青年は、夭逝した詩人として知られれる。24歳8ヶ月。肺病で他界する。彼はこうして詩を断じてしまうわけだが、僕は、これらを反転させた図式をもってして詩の世界と出会う。若くして肺病を患い、手記をしたためた。僕の詩の始まりだった。よくある話だが、こうした反転事例を目の辺りにすると不思議な何かを感じてしまう。立原の言葉でいうなら「大きなめぐりのようなもの」となるのだろうか。それにしても、装丁は繊細で静謐な柔らかい調子のものだった。ハンガリーの版画家コズマ・ラヨシュ(1884−1948)の
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