クレピュスクルの詩人−「立原道造が求めた形象」展のスケッチ/バンブーブンバ
駒込の地を離れることになった。
愛着を持って、というとそうでもない。ローリングストーンズ。またしても引越しである。一年余りの経過というのはいろいろなことをやり過ごしてしまう。
立原道造記念館もその一つだった。残り僅かの月日となって、ひとときを充ててみようと思った。
麗らかすぎる昼下りだった。
知る由もなく、東京大学は五月祭で賑わっていた。正門から面食らったわけだが、道なりに安田講堂がレンガの目地を窪ませるほどの光を浴びてギラギラしていた。犇くようにして立ち並ぶ出店と相俟って、二階のバルコニーは物悲しく影を曳いた。立原道造記念館は、そうした喧騒を遠く見守るようにして置かれる。弥生門を抜けた辺
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