飛ばされた燕/みぎめ ひだりめ
 
した
それはなんとも 立派で
美しい 風情のある木でありました
梳くような香りのする 深みのある茶色の幹は
少しばかりの風には びくともせず
たおやかな葉は しかし水をはじき
激しい雨の音だけを 木肌へと響かせています

燕は過ぎ去った 嵐に
目をぱちくりとし
一息ついて 太い枝にもたれかかりました
そうして
あまりにも安心してしまったものですから
じわじわと 涙が出てきてしまいました
ちいさな羽は さわさわと かすかに揺れ
もっとちいさく つぶらな目は うるうると
透明な粒をながしています

ぴ と声を漏らすと 
もう抑えられなくなってしまって
ぴぃぴぃ 
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