春紅葉(おまんとくれは、その弐)/佐々宝砂
 
図した。
大女は軽く頷き、
左腕だけで軽々と少女を抱き上げると、
ひょいと左の肩に乗せ、
ついで右腕だけで都風の女を抱き上げて、
ひょいと右の肩に乗せた。

 駆けますぞ。

大女が右肩の女に言うが早いか、
びゅい、
と景色がうしろに飛ぶ。
風圧が少女の唇を歪める。

少女の身体はやはり動かなかったが、
恐ろしいとは思えない。
心の芯まで痺れている。

風がやんだ、と思ったら、
飛びすぎていた景色も流れやみ、
大女は少女たちを下に降ろした。
荒れた土しか知らぬ少女の足が、
柔らかな緋毛氈を踏んで驚愕した。

見ればあたりは満開の桜林、
緋毛氈の上に
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