STRAWBERRY HANDKERCHIEFS FOREVER。/田中宏輔
ェニーツィン『煉獄のなかで』下巻・82、木村 浩・松永緑彌訳)
彼女はハンカチを拾いあげようとはしなかった。
(ボリス・ヴィアン『日々の泡』52、曾根元吉訳)
死なしめたのである。それは、苺の刺繍が施された一枚のハンカチだった。苺にハンカチ、といえば、(6)シュトルムの『みずうみ』にある「森にて」の場面が思い出される。苺は聖母マリアのエンブレムで(7)あり、ハンカチを聖骸布(キリストの遺骸を包んだ亜麻布)、或はヴェロニカの聖顔布に見立てると、ハンカチに包まれた苺の構図は、キリストに抱かれた聖母マリアの図像、すなわち、「逆ピエタ」となる。「包む」は、「みごも
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