STRAWBERRY HANDKERCHIEFS FOREVER。/田中宏輔
ェニスに死す』高橋義孝訳)
ハンカチの隅をつまみ上げてみた。
(ディクスン・カー『絞首台の謎』10、井上一夫訳)
ハンカチが悲しみの象徴となることは、涙をふくときに使われることから容易に連想される。「突然わたしは、自分の目に涙が溢れ出るのではないかと恐れた。わたしは人前を取り繕うために叫んだ。/「目にレモンのしぶきがはねたんです」/わたしはハンカチで目をふいた。」「あのときハンカチのかげで感じたあの憂鬱さをわたしはけっして忘れることができない。それはわたしの涙をかくしたばかりでなく、一瞬の狂気をもかくしたのだ。」「わたしはハンカチを顔から放して、涙ぐんだ目を
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