わたしの場合毒虫ではなく/ただのみきや
 
腕を振ってもその糸は切れずにど
こまでも細く長く伸び続け 気づけばまるで不器用なこ
どもが朝食時に納豆と格闘しながら糸に絡めとられてい
くような 傍から見れば可笑しいが本人的には至って真
剣な困った状況に陥っていた

その時わたしは白紙の黒点がさっきよりも大きくなって
いることに気が付いた 嫌な想いが頭を過る───過っ
たはずの想いが再び戻って来て頭の真ん中に居直って貧
乏ゆすり始めている───黒点の裏側 白紙の深いとこ
ろから何かがこちらに近づいて来るような 案の定一点
を見つめるわたしの目には見えるはずのないものの気配
が色のない染みのように見え始めていた なんてことだ
[次のページ]
戻る   Point(4)