雨の日/由比良 倖
 
は」と言い換えます)、宇宙から微生物にまで、ただ物差しを当ててきただけです。世界に雨が降り続けて、昼も夜も無くなれば、時間は意味を成さなくなりますし、水没した世界の中で、暗闇の中で、人間にはよすががなくなるでしょう。暗闇は光を理解しないし、光には長さがありません。目を瞑らなくてはなりません。目の奥に光を見なければならないんです。その内……ここは、この世界は全て、水の底に沈みます。僕たちの殆どは、滅びるでしょう。滅んだ世界で、少ないひと達が、ただその日(「その日」なんてものがあればですが)生きることを生きるでしょう。そこにはまた喜びも、悲しみもあって……」
 彼は突然悲しそうに顔を伏せて、急に僕た
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