雨の日/由比良 倖
(実際に僕が「続けていいよ」と無言で示した微かな雰囲気が、彼にはあからさまなものとして伝わったという感覚を、僕は感じた)僕と透子の二人に向かって、先ほどよりも安心したような声で、
「僕は雨の日が好きです。雨の音も。雨のにおいも。くだらないことも嫌なことも、綺麗なものも素晴らしいものも、みんな水に包まれます。今日は時間のない雨の日です。僕は雨の日のたびに、降り止まなければいい、と思います。そうして何日も、何十日も雨は降り続き、この近くでは、人間が決めた基準の一切が水没するんです。その内に」
僕は、何のことか分からなかったけれど、透子は、
「そうなるといいね。その内に」
と言った。
少年
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