雨の日/由比良 倖
喫煙所を兼ねた休憩所には灰皿が二つ置かれているのに、地面には吸い殻が散らばっていた。大分前から管理されてないらしく、灰皿は吸い殻でいっぱいになっていた。そこは展望台のようになっていて、天井がなく、見るべきものと言えば空くらいなのに、今は細かい雨が降っていて、暗い空と、あとはどこまでも続く杉林に、添え物程度の海が見えた。透子と僕の他には、十三歳くらいの少年がいて、足や手を落ち着きなく動かしながら、休憩所の隅のベンチで一心に空を眺めているようにも見えたし、ただ何もかもから目を逸らしているようにも見えた。透子も僕も、誘われるようにして、煙草も吸わずに、空を見ていたけれど、僕には面白いものなんて何もある
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