あれから/山人
 
の横にしなだれた。そしてまた二度目の花をつけようとしている。洋々と秋の風を浴び、草はみずみずしい体に露をたくわえ揺れている。
 あるはずもない、胸ポケットに手をやる。懐かしいセブンスターズのパッケージを取り出し、銀色の帯を解き、香り立つ乾燥葉の甘い匂いと真新しい巻紙の匂いをかぐ。
ゆらゆら揺れる透明な百円ライターの液体燃料が秋の風景を灯す。
呼吸を止め、口の中に息を吸引しながらライターの火をつける。七割の煙をそのまま吐き出し、残りの三割を静かに慎重に肺に送る。
 たしか、タバコを止めたのは二〇〇二年五月二十三日・・・だった。
一度目の煙を吐き出すとその年の事柄を思い出していた。二度目の煙
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