MELBA TOAST & TURTLE SOUP。 カリカリ・トーストと海亀のスープの物語。/田中宏輔
かないことを前提として詠まれたものを見かけた。桂郎の句では、亀は鳴くものとして扱われていたが、別に、亀が鳴くことには疑問を持たなかった。これまで、亀の鳴き声など耳にしたことはなかったけれど。
絵の
(ウィーダ『フランダースの犬』3、村岡花子訳)
唇が動く。
(サルトル『嘔吐』白井浩司訳、句点加筆)
父はわたしにたずねた。
(ズヴェーヴォ『ゼーノの苦悶』4、父の死、清水三郎治訳)
このように、亀が鳴くことを否定する句をつづけて目にすると、逆に、亀が鳴くことを前提とした句が、数多く詠まれているのではない
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