PANDA/若森
 
噛みちぎろうとしている。
 ついでに今、オレンジジュースとか飲んでる。幼虫を十匹食べたから口の端から緑色の液体を垂らしてる、頬がコケたパンダは、そんな僕の様子を凝視していた。虚空を見つめるみたいに。

 気がついたらパンダはどこかへ消えてしまった。僕は特に気にせず、むしろ嫌いな奴が消えて生活がしやすくなった。
 ある日、僕は何かに耐えられなくなった。とにかく全ての何かだ。雷のような衝動だ。僕は何なのだ。僕は探り始めた。ふにゃふにゃな視界とふにゃふにゃな部屋とふにゃふにゃな僕を、確立させる必要があった。僕の右手にはナイフが握られていた。人を殺したのはパンダではなく僕だった。パンダが人を殺すわ
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