PANDA/若森
すわけが無かったんだ。僕だって人なんて殺さないよ。でも僕は罪を犯したんだ。僕はパンダを虐めてしまったんだ。
僕はこのブラックホールより暗い部屋のカーテンを、こじ開けた。飛び込む景色は痛いくらいに鮮明で、空は世界が崩壊する寸前のように、青かった。僕は部屋を飛び出した。探るのだ。探るのだ。そうして見つけたのは白黒の民家の前、生きている植物に紛れて、倒れているパンダだった。いや、僕だった。僕はパンダをぶん殴って目を覚まさせた。動揺しているパンダの手を引いて、熱くキスをした。「愛してる」僕はパンダの目を貫いて、そう言った。パンダは目を細めて、少し口角を上げて「僕も愛してる」と言った。
僕はパンダだ。パンダは僕だ。僕は一人の人間として、これから生きていくのだよ。
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