聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
ぱり馬鹿を見てしまうひとみたいに、愛おしくて、何だか、とても……人間らしく思える」
そう言って、唐突に言葉を切って、紗々は煙を天井に向かってゆっくり吐いて、手を伸ばして、僕のテーブルの上にある灰皿で、煙草の火をゆっくり消した。それから、エビアンのボトルを両手で持って、中の水を揺らしながら、自分だけの考えに浸っているみたいだった。僕は、ベッド際の窓から、煙草を投げ捨てた。姉は、それについては何も言わず、僕の動きを合図にするように、残った水を一気に飲み干してから、
「あー、お酒欲しい、アル中になりたい」
と言った。
「紗々、ビール一本で寝ちゃうじゃん」
姉は笑って、
「あー、うん。アルコ
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