聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
ルコールは正しいのですよ。覚醒剤もヘロインも正しいの。人生を、健康なひと達の為のゲームだと、知ってか知らずか捉えているであろう社会的な人々は、あらゆる中毒を逃避と捉えるでしょう。そう言う見方しか出来ないのね。多分、……でもこれは言い過ぎね。
 でも、違うの、私にアル中になる才能があったとするなら、お酒を飲む理由は、逃げるためではなく、例えて言うなら、善意の保留のため。お酒を飲んで飲んで飲んで飲んで、そして最後に私は、つまり最後まで私は目覚めていて、私の一点は真っさらなままで正しくあって、優しくあるの。そして、それが私の望みでもあるのよ」
 紗々は煙草の箱を覗き込んで、もう一本もないと知ると、握
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